220616

大学からの帰り道、木曜の昼の総武線に乗ってぼんやりとしていたら、隣の席にとあるカップルの彼女が腰掛けた。彼女は彼女の目の前に立つ彼氏の右手を絶え間なく舐めまわすように揉みこんでいた。彼氏は気にする様子もなく遠くを見ていて、何か考え事をしているようだった。私が一つ隣の席にズレてあげればそのカップルは隣同士で座れる。きっと周りの人々も気づいている。普段なら間違いなく譲っていた。しかし今日は寝たふりをして見ていないことにした。彼女は電車から降りるまでずっと手を揉んでいた。指先から少し骨ばった関節、肉厚な掌、両手を使って丁寧に揉んでいた。時折彼氏と目を合わせ甘い表情を見せながら、ただ手を揉んでいた。私は一層遠くを眺め、瞬く間に流れていく街並みを普段よりも長く感じていた。